子どもはどうやって褒めて育てるべきなのか?
昔に比べ、今は子どもを褒めて育てることは、多くの人に支持されるようになりました。
教育業界でも以前のような“叱りつける”指導から、“褒める”指導がより推奨されるようになりました。
でもこの褒めることが、科学的に効果はあるのかはあまり議論されていません。
ここでは「学力の経済学」という書籍を参考に、褒めて育てるべきかを考えていきたいと思います。
結論から言えば、能力ではなく「行動」や「努力」に対して褒めると、子どもの自己肯定かは高まり、自ら進んで行動するようになります。
この記事では、なぜ日本人の自己肯定感は低いのか、そして褒め方がどう影響するのかを踏まえながら、この記事でより良い褒め方をまとめました。
そもそも子どもは褒めて育てるべきなのか?
多くの書籍の中で、子どもを褒めて育てることのメリットが述べられています。
子どもを褒めることで、「子どもは自分に自信を持ち、自尊心を高め、さまざまなことにチャレンジしていける子どもが育つ」と書かれています。
本書では
“心理学の研究では、自尊心の高い生徒は、教員との関係が良好で、学習意欲が高く、実力に見合った進路を選択をしている傾向があることが指摘されています”
と書かれています。
自尊心を高めることは、自分を認めるということなので、自立した人間になるための第一歩であり、他者を敬う心を持っているので、他者との関係が良好なのも頷けますね。
そんな中、日本人は他の国と比べて、自尊心が著しく低い子どもが多いことで有名です。
日本の高校生の70%以上が「自分はダメな人間」だと思っている。
日本青少年研究所が日本、アメリカ、中国、韓国の中高生を対象に行った調査で「自分はダメな人間だと思う」と答えた中高生の割合は、日本が圧倒的に低く、学年が上がるにつれて徐々に低下していく傾向があります。
さらに“自分には価値がある”という自己肯定感を持っている高校生は10%を切っているという状態です。
日本人の幸福度は先進国の中で、かなり下位に位置している。
さらに国連が出している「世界幸福度ランキング」では日本は56位と、北欧や北米の主要国と比較して、かなり下位に位置しています。
さらに、ユニセフの公開データでは、日本の子どもの精神的幸福度は、調査に参加した中で38カ国中、下から2番目の37位という、不名誉な結果となっています。 日本は、生活に満足していると答えた子どもの割合が最も低い国の一つでした。
オランダが90%なのに対して、日本は62%です。貧困国でもないのに、このような状態なのは悲しい現実です。
このような実態を受け、日本の教育業界でも“褒める教育”、つまり自尊心や自己肯定感を高める教育が支持されつつあるということですね。
いくつかのアメリカの研究で、自尊心が高い人は、学習意欲や学力も高く、未成年の喫煙や飲酒などの反社会でき行為が少ないということが示されました。
では実際に自尊心を高めることは、子どもの成長に効果があるのか?
この「学力の経済」では “自尊心は結果に過ぎない”と述べられています。
心理学者であるフロリダ州立大学のバウスマイスター教授らの調査によると、自尊心が高いと学力も高いのではなく、学力が高い子どもは自尊心も高かったというわけです。
× 自尊心が高い子 = 学力が高くなる
◯ 学力が高い子 = 自尊心も高い
ここからわかることは、学校という空間の中では、「学力」が基準で評価されることは、程度の差はあっても、大きくは変わりません。その中で「学力優秀」と認められた子ども、自然と「自尊心」も高くなるというのも頷けます。
このことは私が教員の時に感じたことと合致しています。
教員と良好関係にある生徒の多くは、学業でもうまくやっている子です。
それに対して、学校や教員への不満が多い子は学業がうまくいっていない子が多い。
学業でなくても、部活動や習い事でうまくいっている子も、ネガティブな行為や言動が少ない印象がありましたが、科学的にも相関関係があるということです。
進学校などにいくと、「学力」への評価がより顕著になるので、学業で苦しむ子は「自尊心」を失っていくでしょう。
学力で上位20%は、学習意欲も高く、学校への満足度も高いです。」
学力中間層の子は、学校に対する不満が増えてきて、意欲もあまりありません。
学力で下位20%は、学校に対する不満が多く、勉学に興味がないという印象です。
なんでこんなに日本人は自己肯定感が低いの?
この現状は日本の学力競争社会の産物です。落ちこぼれは虐げられ、そのレッテルを貼られ続けながら、学校という空間で自尊心や自己肯定感を失っていくというのが現状です。
親が「なんでこんな点数しか取れないの?」と叱れば、その状況に拍車をかけます。
教育評論家・法政大学名誉教授の尾木直樹先生は以下のように分析しています。
日本では、15歳で迎える高校受験によって、子どもたちは偏差値という学力指標だけで振り分けられてしまいます。思春期という大切な時期を、一貫して成長を促し学力形成していくのではなく、競争原理に基づく一斉主義により序列化するわけですから、子どもの自己肯定感がガタガタになってしまい、幸福感が育たなかったり自分に自信が持てなかったりするのは必然だと思います。
ユニセフ報告書
日本の教育は、最低限の学力を担保するという面では世界屈指の教育システムです。しかし、例外を認めず幸福度が著しく低いという現状に対して、何もしないというわけにはいきませんよね。
心理的に安全が担保されてない空間で、日本人は我慢するという特技を身につけます。日本人の勤勉さに日本は助けられていますが、子どもが幸福を感じていないというのは、誰も望んでませんよね。
それではどうやって褒めれば、自尊心や自己肯定感を高められるかをみていきましょう。
無理に褒めると、逆に学力が下がる?
バージニア連邦大学のフォーサイズ教授らの研究によると、
成績の悪い学生に自尊心を高めるような声がけやメッセージをかけると、さらに成績が低くなったことが示されました。
この結果に対して、書籍ではこう書かれています。
“悪い成績を取った学生に対して自尊心を高めるような介入を行うと、悪い成績を取ったという事実を反省する機会を奪うだけでなく、自分に対して根拠のない自信を持った人になってしまうのです。”
この結果も納得できます。
学力は低いけど、他人のアドバイスを受け取ろうとしない子どもに限って、根拠のない自信があり、努力もせずなんとかできると考えている生徒が多いというのが現状です。
私自身もそんな子どもでしたし、本当に恥ずかしい限りです。
簡単にいうと、何の根拠もなく褒めると、実力がないのに努力もしないナルシスト
を育て上げてしまうかもしれないということです。
実際にどうやって褒めればいいの?
それでは、具体的にどうやって褒めれば子どもの自尊心を高められるのか。
ここでは実験を紹介しながら、効果的な方法を紹介します。
コロンビア大学のミュラー教授らの調査によると、子どもの能力を褒めるより、子どもの努力を褒める方が、子どもは自尊心を高め、学力にも影響することがわかったようです。
実験結果は「能力」を褒められた子どもは成績を落とし、努力を褒められた子どもたちは成績を伸ばしたという結果になりました。
この結果からわかることは、「能力」という結果を褒めるのではなく、「努力」という過程を褒めることが良いということです。
ちなみに、「能力」を褒められた子どもは、成績が良くない時に、成績について嘘をついたり、言い訳をする傾向があったようです。
一方で、「努力」を褒められた子どもは、成績が良くない時に「努力が足りないせいだ」と考え、次のテストでも工夫して挑戦するようになります。
学校でも家庭でもテストの結果だけでなく、「努力」の評価をする場面を作る必要があるということです。
どうやって努力を認めてあげればいいの?
ここまで述べてきたように、「努力する大切さ」を教えることが、子どもの学力や自尊心を高めることに繋がります。
子供を褒めるとき大切なことをまとめると、
×「あなたはやればできるのね(能力)」、「あなたは天才だよ(能力)」
◯「今日は1時間も勉強出来たんだね」、「今月は遅刻や欠席が1度もなかったわね」
と具体的に子供が達成した内容を褒めることが重要です。
私もこのことに気づいてからは、何を達成すべきかを子どもにできる限り最初に提示するようにしています。
そうすれば、子どもは達成すべき目標のために自ら動き、その達成したことを褒めれば、自己肯定感や自尊心を高めていきます。
もちろん全員が目標を達成できるわけではないですが、それでも確実に自分から動く子どもは増えると思います。また、目標を達成した子どもが他の子どもを助けるという場面も少しずつ増えてきます。
この相乗効果も、結果や能力だけでなく努力の過程(プロセス)を認められた子どもが見せてくれる素晴らしい光景だと考えています。
まとめ
子どもを褒めることは、確実に子どもの自己肯定感を高めることにつながります。
しかし、褒め方に注意が必要です。以下にまとめます。
❌ 何の根拠もなく褒める (努力しないナルシスト)
❌「能力」を褒める (能力のせいにして努力しなくなる)
❌ 悪い声のかけ方の例
→「あなたはやればできるのね(能力)」
→「あなたは天才だよ(能力)」
⭕️ 具体的に達成した行動を褒める
⭕️「努力」を褒める
⭕️ 良い声のかけ方の例
→「今日は昨日より1時間も多く勉強出来たんだね(個人の成長や努力)」
→「今月は遅刻や欠席が1度もなかったね(個人の成長や努力)」
子どもの褒め方一つで、子どもの自己肯定感が高まり、失敗を恐れず自ら考え行動できる子どもが育ちます。
少しでも子どもに対する声がけを意識してみると、少しずつ変化が現れるはずです。
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最後までお読みいただきありがとうございました。