ここでは、英語の比較級で頻出の表現”no more 〜 than” “no less 〜 than”を用いた、いわゆる「クジラ構文」について解説します。
私も教える中で
「なんでこんな訳になるの?」
「”同様に”ってどこからきたの?」
「こんなの使われるの?」
などさまざまな生徒からの批判がある文法項目ですが、しっかり役割を理解すれば、怖くありません。
まずは”no”の本来の意味から理解していきましょう。
noの役割
“no 比較級 than”を理解する前に、まずは“no”の役割をまず理解していきましょう。
”no”の本来の意味は、「まったく〜ない」と強く否定し、「ゼロである」ということを強調しています。
例えば
”I have no idea(知りません)”は”I don’t know”の強調の意味使われますが、
この”no”には「まったく検討がつきません」という強い否定の中に、「考えがゼロです」という意味合いが含まれています。
これが今回の”no 比較級 than”の表現で使われると、以下のような働きをします。
”no” = ① 直後を強く否定し、② 差をゼロにします。
上の図のように、
① “no”は直後を否定し、「まったく〜ない」と否定し、
② “than”をゼロ化し、差がゼロになるので「同じある」という意味に変わります。
このように、”no”は
強く否定するだけでなく、
比較表現の本来の役割である「差」を表す”than”の意味を
差をゼロにし「同様に、同じように」と言う意味に変えてしまいます。
”no”はすごい強い影響力を持っていると理解してください。
“no”の役割が理解できたら、実際に例文を見ていきましょう。
A is no more B than C (is D) :「AはBではないのと同様にCも(Dでは)ない」
例文
A whale is no more a fish than a horse is *(a fish)
馬が魚でないのと同様に、クジラも魚ではない。
*後ろの”a fish”は、すでに前で使われているので、普通は省略します。
なので( )にしてあります。
この表現を図解で確認していきましょう。
”no” = ① 直後を強く否定し、② 差をゼロにします。
上の図のように
”no”は”more a fish”を「魚ではない」と強く否定します。
“no”はゼロ化して、差をなくすので、
“than”は「〜より」という意味でなく「同様に」という意味になります。
「クジラは馬と同様に魚ではない」という意味になります。
A is no less B than C (is D) :「AはBであるのと同様にCも(Dでは)ある」
例文
A whale is no less a mammal than a horse is *(a mammal).
鯨は馬と同様に哺乳動物である。
*後ろの”a mammal”は、すでに前で使われているので、普通は省略します。なので( )にしてあります。
この表現を図解で確認していきましょう。
”no” = ① 直後を否定し、② 差をゼロにします。
”no”は後ろの”less”を打ち消して肯定文の意味になります。↓
no(ー) × less(ー) = 肯定(+)
”no”は”less a mammal”を否定し「哺乳類ではなくはない」→ 「哺乳類である」という肯定の意味に変わります。
“no”も”less”もマイナスの意味なので、2重否定はプラスの意味になります。
“no”は差をなくすので、”than”の「〜より」という意味を「同様に」という意味に変えます。
「クジラは馬と同様に哺乳類である」という肯定の意味になります。
以下の記事も参考にしてください↓
クジラ構文はどんな時に使われるの?
このクジラ構文は、かなりマニアックな表現ですよね。
私も学生の時にどんな時に使うのかがわかりませんでした。
でも、表現は存在する限りそこには意図があります。
例文
1) A whale is no more a fish than a horse is *(a fish)
馬が魚でないのと同様に、クジラも魚ではない。
2) A whale is no less a mammal than a horse is *(a mammal).
鯨は馬と同様に哺乳動物である。
これらの文はどんな時に使われるかというと
1)の例文は、クジラが魚だと思っている人に対して、
「そんなことありえない!!」
ということを強調するために使われています。
強調するために、than以下には誰でもわかる「ありえない」ことを入れて、
ありえないことを強調しています。
この例文で言えば、「馬」=「魚」ということはあり得ないですよね。
可能性0%なことを、あえて対象にすることでありえないことを強調しています。
2)の例文”A whale is no less a mammal than a horse is *(a mammal).”は、クジラが哺乳類ということは、
「当たり前だ!!」
ということを強調するために使われています。
強調するために、
than以下には、誰でもわかる「当たり前」なことを入れて、
当たり前なことを強調しているんです。
馬=哺乳類ということは当たり前ですよね。
誰でも知っていることをあえて対象にすることでありえないことを強調しています。
○ no more ~ than … = 「ありえないこと」を強調
→ than以降は誰もが知っている「ありえないこと」を入れる
○ no less ~ than … = 「当たり前なこと」を強調
→ than以降は誰もが知っている「当たり前なこと」を入れる
このように”ありえないこと”や”当たり前なこと”を強調するために使われるのがこの表現の役割です。
ちなみにアメリカのオバマ元大統領は、この構文を就任演説で使っていたみたいです。
しかし、メディアでは間違った訳がされていたようです。
→ オバマ就任演説の誤訳 (出典:上級英語への道)
Practice(練習問題)
以下の英文を訳しなさい
1) She is no less beautiful than Madonna is.
2) He can no more speak French than I can.
3) Even the brightest of chimpanzees can no ( ) speak than they can fly.
① less ② least ③ more ④ most〈東京薬科大〉
※ bright : 賢い
4) 私の両親は,私と同様に,日本の古文を読むことができない。〈中央大〉
My parents are no ( to / more / classics / Japanese / than / able / read / I ) am.
まとめ
比較級の中でも難しいと言われる「鯨構文」は理解できましたでしょうか?
ここでまとめていきましょう。
1) A is no more B than C (is D) :「AはBではないのと同様にCも(Dでは)ない」
2) A is no less B than C (is D) :「AはBであるのと同様にCも(Dでは)ある」
○ ”no” = ① 直後を強く否定し、② 差をゼロにします。
① 直後を強く否定する
no more A = A ではない (否定)
no less A = A である (肯定)
② 差をゼロにする
“no”は”than”の意味を「同様に(差がゼロ)」という意味変えます。
○ no more ~ than … = 「ありえないこと」を強調
→ than以降は誰もが知っている「ありえないこと」を入れる
○ no less ~ than … = 「当たり前なこと」を強調
→ than以降は誰もが知っている「当たり前なこと」を入れる
「この比較級の構文はどうしてこのような意味になるのか」を誰かに説明して見てください。
自分が何が理解できてないのかが明確になります。
もし、曖昧な点があれば、お問い合わせをしていただければと思います。
簡単にまとめると
形 | 意味 | 伝えたいこと |
「no more~than・・・」 | 「・・・同様に~ではない」 | ありえない!! |
「no less~than・・・」 | 「・・・同様に~だ」 | 当たり前だ!! |
最後までお読みいただき、ありがとうございました。